このブログについて

自身の体験をつづりたいと思います。
拙い文章ではありますが、お暇ならお付き合いください。

2012年3月1日木曜日

追憶 9

それは突然だった。


心の中にわたしを揺さぶる感情が芽生えていることに気が付いた。





「それは仕事を辞めよう」





という感情であった。


やりたくて始めた仕事である。


しかも、仕事に対して不満があった訳ではない。


寧ろ、アルバイトの立場では重要な仕事を任されていたし、共に働く仲間も良い人ばかりで、充実感さえ感じていた程である。


辞める理由が分からない。


しかしながら、辞めたいのである。


わたしは自分がなぜそのように考えるのかを考えた。


しかしながら、いくら考えても有力な答えに辿り着くことは出来なかった。


考えれば考える程に絡まり、答えに辿り着けない。


不思議ではあるけれど、わたしの頭の中では故郷の風景が繰り返し再生されるのであった。


もちろん、わたし自身の意思ではない。


思い出そうとしている訳でもない。





「この感覚は一体何なのだろう?」





わたしの胸中にはそのような思いが溢れていた。





ある日、いつもと同じように仕事をこなし、夕方の15分休憩の時間になった。


わたしはスタッフルームに向かうために階段を上がった。


すると、同じタイミングで店長も15分休憩だったらしく、わたしの前を歩いていた。


わたしは店長に追い付くと声を掛けた。


話したいことがあると告げると、スタッフルームで聞くと言ってくれたので店長の後を追うようにスタッフルームに入った。





「話って何?」





店長は軽く聞いてきた。





「今月いっぱいで辞めようと思います…」





わたしは自分の口を吐いて出た言葉に驚いた。


しかしながら、その言葉を撤回しようとは思えなかった。


店長は一瞬止まった。





「えっ?ダメだよ。困るよ」




店長は困惑しているようであった。

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