女は小さく「ア゛ッア゛ア゛ ッア゛…」という具合に、しゃがれた声で何かを懸命に訴えようとしているようだった。
なんとなくそう感じる。
口がガクガクと震え、そこから言葉にならない声が漏れている。
しかしながら、わたしには女の訴えようとしていることを理解することは出来なかった。
すると、女はわたしに倒れ込むように覆いかぶさってきた。
わたしを押さえ付けるプレッシャーは一段と強くなっていった。
耳元で同じように何かを訴えてくる。
しかし、それでも全く分からなかった。
わたしには女の訴えを理解するまでの余裕が無かった。
わたしを押さえ付けるプレッシャーはとても強く、恐怖心まで生まれてくる。
そのような状況で女の訴えを理解することなどわたしには不可能だった。
その時、わたしの心の中に新たな感情が芽生えてきた。
それは「怒り」であった。
きっと、プレッシャーに対して精神が限界に達してしまったのだろう。
心の中に芽生えた怒りの感情は、心の防衛策だったのではないかと思う。
わたしの中の恐怖心は一転して怒りに変わった。
わたしは押さえ付けられていることにとてつもなく腹が立った。
「何でわたしが女に押さえ付けられなければならない!こっちは男だぞ‼」
わたしは単純にそう思った。
わたしは無性に腹が立って、「腹の上からどかないのなら殴ってやる!」と心の中で強く思った。
わたしの思いが女に通じると思ったからである。
しかしながら、女がわたしの上から動く気配は無かった。
わたしはまた腹が立った。
「仕方ない、一発殴ってやる!」
そう意気込んだ。
そして、この強烈な金縛りを解く方法を考えた。
わたしの中に直感的に浮かんだ考えは、右の拳に意識を集中するというものだった。
右の拳だけに意識を集中すれば、女の金縛りにも勝るのではないかと真剣に思った。
わたしは早速、右の拳に意識の集中を始めた。
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