わたしは是非ともそれを交換してくれと頼んだ。
しかしながら、男はなぜか険しい表情を浮かべていた。
「どうかしましたか?」
気になってわたしが聞くと、男は多少恥ずかしそうに口を開いた。
「あのな、実はこのパーツはウチにはないねんな。それで、ここからちょっと行った所に大きなバイク屋があるんやけど、そこなら置いてると思うねん…買って来てくれへんかなぁ?」
わたしは「近くにバイク屋あったのかよ!しかも大きいのかよ!」と思っていた。
「分かりました。行ってきます」
「じゃあ、頼むわ」
男はわたしにメモを持たせて見送った。
メモにはブレーキパッドの品番が書かれていた。
歩いて10分もしない内に目的のバイク屋に到着した。
近い…
しかも、大きい…
わたしはため息を吐いて店内へ潜り込んだ。
店員にメモを見せると、それに相応しいものをすぐに手渡してくれた。
わたしは代金を支払い、急いで男の待つ小さなバイク屋へと向かった。
バイク屋に到着すると、早速手に入れたブレーキパッドを手渡した。
男はわたしに丁寧に説明しながら作業を見せてくれた。
そして、順調に作業が終わった。
わたしは男に代金を尋ねた。
すると男は代金は必要ないと言う。
旅行の餞別(せんべつ)らしかった。
わたしは困った。
ここまでお世話になっておいて、お礼もしないなんてとても気持ちの悪いことだと思った。
わたしはしつこく代金を尋ねた。
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