わたしは自らの内側に「心の目」を探し出し、それを鍛えて自由に扱うことを決心した。
わたしはとにかく様々な方法を試そうと思った。
要は霊を捉えることが出来れば良い訳である。
成すべきことは単純である。
その日からわたしは霊を捉えようと奮起した。
就寝前には必ず「金縛りに会いますように」「お化けちゃん、わたしに会いにおいで」などと心の中で何度も何度も繰り返して唱えながら眠りに就いたものである。
そうすると面白いもので、わたしは幾度となく金縛りに遭遇するようになった。
寝ている最中に感覚だけが目覚めるような感覚がある。
それはまるで浅い眠りを彷徨っているようだった。
眠っている時の感覚と同時に、起きている時と同じように周りの雰囲気を感じているような不思議な感覚である。
その時はなぜか、感覚が高校時代の自分であった。
わたしはその感覚を懐かしいと感じていた。
現在の感覚を持ちつつ、高校生の自分の感覚を持っていた。
それもまた不思議な感覚であった。
わたしが眠っている部屋は、高校時代と同じ場所である。
家は中庭を囲むように建物がコの字に建てられている。
わたしが眠っている部屋は、道路に面した納屋と車庫が一体となった建物の一角にある。
そして、わたしが眠っているベッドの真横には正門があった。
わたしが使っているベッドは下に収納スペースを確保するために1m程の高さが設けられたタイプである。
だから、誰かが訪ねて来るとわたしの枕は部屋の真横を通る人の目線と同じくらいの高さになるために、息遣いや足音などですぐにその存在を確認することが出来た。
その日、高校生だったわたしは、誰かが訪ねて来たことを眠っている状態で感じていた。
その人は道路から敷地に入り、部屋に沿うように正門へと向かってきた。
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