このブログについて

自身の体験をつづりたいと思います。
拙い文章ではありますが、お暇ならお付き合いください。

2012年3月24日土曜日

追憶 32

激しいプレッシャーの中でわたしは意識を集中した。
しかしながら、それは簡単なことではなかった。
なぜなら、ずっと押さえ付けられると言うか、落下していると言うか、そういう感覚の中にいたからである。
ジェットコースターで読書をするようなものだろうか?
とにかくそのような状況で集中するのは困難を極めた。
その間にも女は耳元で何かを訴えている。
女の吐息が耳に触れる。
わたしの全身は激しく泡立った。
心の中には不満が充満し、今にも爆発しそうであった。
理不尽に自由を奪われることは辛いことだと思った。

激しいプレッシャーの中でも少しずつ意識が右手の小指の指先に集まり始めた。
わたしはそれが掻き消されないように守りながら大切に育てた。
小指から薬指、中指から人差し指、そして親指にまで意識が行き渡った。
指が僅かではあるが、動く感覚があった。
わたしはそれを見失わないように更に集中を高めた。
わたしの集中が高まるに連れて、金縛りのプレッシャーが弱まっているように感じる。
ほんの僅かではあるが、そう感じることが出来た。
女が明らかに動揺しているのを感じる。
わたしは隙を伺っていた。
すると、一瞬ではあるがその隙が「見えた」気がした。
わたしは一気に右の拳を握り締め、女に向けて力一杯に放った。
拳は鈍い音を立てた。

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