このブログについて

自身の体験をつづりたいと思います。
拙い文章ではありますが、お暇ならお付き合いください。

2012年3月22日木曜日

追憶 30

わたしは目を開けることすら出来なかった。
彼女だという安心感から、わたしは状況に対して完全に油断していた。
しかしながら、「こいつ」は彼女なんかではない。
何か得体の知れないものが、彼女に成りすましているのだろう。
その変化の大きさにわたしはなす術が無く動揺し、その流れに沿うことしか出来なかった。
全身がぎゅっと圧縮されるようなとても強いプレッシャーが襲う。
不思議なことに、わたしは目を閉じているのだけれど、女の姿は見ているのである。
しかも、わたしは女を正面に捉えていた。
まるで馬乗りになられているような状態である。
例え今の状態で目を開けたとしても真横を向いているため、視野の範囲で女を捉えることは難しいと思われる。
だいたい、正面で捉えているということを説明することが出来なかった。
まるで、映像が頭の中に流れ込んでくるようである。
目は閉じているので、そうとしか考えられなかった。
黒い影が体をもたげた時に、それは女だと分かった。
異常に多い黒髪が女の全身を包むように生えている。
その隙間からチラチラと顔が覗くが、わたしの全く知らない顔だった。
この女が彼女では無いことは証明された。
わたしはどうにかこの状況を脱したいと思い、身体をどうにか動かそうと足掻いていたが、焦れば焦る程に状況は悪化しているように思われた。

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