このブログについて

自身の体験をつづりたいと思います。
拙い文章ではありますが、お暇ならお付き合いください。

2012年3月5日月曜日

追憶 13

翌日、友人を仕事に見送るとわたしは早速バイク屋を探して近所を散策した。
すると、歩いて5分くらいの場所に小さなバイク屋を発見することが出来た。
小さなバイク屋は、割と大きな通りに面し、バイクの修理を主体として、中古のスクーターを販売しているようであった。
歩道には、スクーターやゴミ?のようなパーツの残骸が無造作に迫り出している。
わたしはその光景を見て「ここのバイク屋で大丈夫か?」と思った。
しかしながら、他にバイク屋も見当たらなかったので、意を決して訪ねてみることにした。

狭い空間に道具やらパーツやらが乱雑に積み上げられている。
一台の赤いバイクがピットに入っていたが、それが瓦礫の中に咲く一輪の花のように見えた。
瓦礫の中に何かを探しているように、グリスによって黒く汚れた「ツナギ」の小さな背中がわたしを出迎えた。

「おはようございます。お邪魔します」

瓦礫の中にわたしの声が響いた。
すると、黒く汚れたツナギがゆっくりとわたしを振り返った。
そこには鋭い視線があった。
それはまるでよそ者を見るような目…
それは痩せた男だった。
中年の男はわたしを確認して立ち上がった。
すると、鋭い眼光は影を潜め、穏やかな目をした小柄な男になった。

「いらっしゃい。おはようございます」

彼は明るく挨拶をした。

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