不思議なことに何の混乱も無かった。
「あぁ…これは自分だ…」
そう思うだけであった。
しかしながら、わたしはその背中から視線を離すことができなかった。
それは、うずくまるわたしの背中が透けているように見えたからである。
背中だけが半透明に色を薄め、その内部には白い何かを確認することができた。
わたしは体内にある白い何かがとても気になり、その存在が何であるのかを確かめる必要があると感じるのであった。
凝視するような感覚で背中の中に存在している何かに対して意識を集中すると、カメラのピントが合うようにしてそのディテールがはっきりとしてくる。
わたしにはそれが白い鳥の翼にしか見えなかった。
それが濡れた状態で体内に無理矢理収まっているように見えるのである。
わたしはそこで初めて違和感を覚えて、疑問を持った。
何故にわたしは自らを俯瞰(ふかん)しているのか?
何故わたしの体内に白い鳥の翼があるのか?
わたしの中にはこの状況に対する疑問が溢れていた。
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