このブログについて

自身の体験をつづりたいと思います。
拙い文章ではありますが、お暇ならお付き合いください。

2012年10月2日火曜日

追憶 224

ある夏の正午。
空を掴むかのような巨大な入道雲に囲まれた北灘湾には、太陽の熱が容赦なく降り注ぎ、熱で焼かれた水面にはキラキラと光の粒が弾けていた。
わたしは額の汗を袖口で拭い、最後の餌を鯛の生簀(いけす)に放り込んだ。
その時、北灘湾には正午を知らせるサイレンがこだましていた。
わたしは作業を終えて帰路についた。
小さな船外機船がわたしを海に浮かべる唯一の相棒である。
小さな船外機に火を入れ、わたしは焼ける水面を割いた。
ある程度走ると、何気なく背後の南の空が気になった。
それは、いつも感じていた意思であった。

「白龍神⁉」

わたしはそう感じて振り返った。
すると、そこには南の空を覆い尽くすように巨大な白い鱗(うろこ)が輝いていた。
一瞬だけ龍の姿に見えて、それはすぐに雲に変わった。


0 件のコメント:

コメントを投稿