心を蝕む破滅的な力に対抗するのは簡単なことではなかった。
わたしを支えていたのは、苦しんでいる狐を助けたいという気持ちだけであった。
今のわたしには意識的な力に対して何のテクニックも無い。
ただ、気持ちだけでこの状況に挑んでいるのである。
それは無謀なことかもしれないが、既にこの状況にいるのだから、持っているものだけでやるしかないのである。
狐を助けたいという一心で、わたしは黒いものを掴んでいた。
最初から最後まで気持ちの勝負だった。
苦しみに対してわたしの気持ちがそれを凌駕(りょうが)したのであろうか?狐に突き刺さっていた黒いものを何とか引き抜くことに成功したのである。
黒いものを投げ捨て、荒い呼吸を整えるように努めた。
身体が重たいのはどうしようもなかった。
黒いものから解放された狐は素早くわたしの元を離れ、少し離れたところでわたしを威嚇(いかく)した。
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