このブログについて

自身の体験をつづりたいと思います。
拙い文章ではありますが、お暇ならお付き合いください。

2012年5月27日日曜日

追憶 96

黒い犬が抱える寂しさは、いつの頃からか怒りの感情として表現されるようになったのであろう。
彼がわたしにぶつけてくる威嚇(いかく)もその一部であるように思える。
わたしは何となく彼の気持ちが理解できたような気がした。
その時、目の前の暗闇に浮かぶ黒い犬の顔がなぜかわたしの顔に見えた。
正確には、黒い犬にわたしの顔が重なって見えるのである。
わたしは見間違えだと思い、善く善く目を凝らしたが結果は同じであった。
どうしても黒い犬とわたしの顔が重なって見えるのである。
わたしはなぜこのような現象が起るのか、とても疑問に思った。
わたしが黒い犬の気持ちを何となく理解したところで二つの顔は重なって見えた。
わたしが共感したのが原因なのだろうか?
しかしながら、共感だけで重なって見えるものであろうか?
わたしは漠然とではあるが、そこにはもっと別の何か深い意味が込められているような気がしていた。
共感というフレーズが直感的には浮かんだものの、それでは「軽い」ような気がしていたのである。
わたしは二つが重なった顔に対して、自らの意識をより洗練するようなイメージによって照準を合わせた。

0 件のコメント:

コメントを投稿