静寂の中に微かな音が投じられた。
それはとても小さなものではあったが、わたしの静寂を乱すには十分なものだった。
静かな水面に投じられた小石は小さな波紋を作り出す。
それはとても小さな波紋である。
しかしながら、それは時間と共に大きくなり、やがては水面を覆い尽くさんばかりに広がりをみせる。
静寂の中に投じられた微かな音も、それと同じように大きく広がり、わたしの静寂を引き裂いてしまったのだった。
静寂は大きく波打ち、やがてその姿を消し去った。
わたしは静寂から無理矢理に引き離され、真っ暗で寂しさを覚えるような空間に投げ出された。
そこにはあの音が小さく木霊(こだま)していた。
それは、昨日聞いたうめき声だった。
真っ暗で寂しい空間にあのうめき声が鳴り響いているのである。
それはいろんな感情を含んだうめき声に聞こえた。
悲しみは勿論のこと、強烈な怒り、どうしようもない寂しさ、そして空しさ・・・
一つのうめき声ではあるものの、そこにはたくさんの感情がこもっていることに気が付いた。
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