それはリアルな感覚であった。
意識的な世界の感覚ではなく、物質的なの世界の感覚がわたしを包んでいたのである。
わたしは少しばかり混乱していた。
なぜ、わたしが今ここにいるのかを飲み込むことができなかったのである。
心を落ち着かせながら、状況と心の整理を進めた。
すると、わたしの聴覚はある音を捉えることになる。
それは心の中の暗闇の空間で聞いた黒い犬のものと思われる声であった。
それはとても小さな声ではあったが、この場所でも確実にわたしの耳に届くのであった。
わたしはその小さな声に意識を合わせるように努めた。
すると少しずつ声の出どころが分かり始めてきた。
それは、自分自身の声帯から発せられたものであった。
わたしはどういう訳か無意識で声を上げていたのである。
これは自分自身でも驚いた。
それは、今までこのような形で身体が動いたことがなかったからである。
幼い頃は自らの意思に反して身体が動くこともあったが、それは自らの経験の範囲内での動きであった。
それは、その動きが精々今までの経験や自らの常識の範囲内でのものであったため、今回のような違和感は無かったのである。
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