耳を済ませた時、わたしには喧騒(けんそう)のようなものが届いた。
それと同時に、雲のような映像を捕らえた。
それは、頭の中に流れる映像であり、物質世界とは違う次元の映像である。
それは、睡眠時に見る夢のような映像であり、想像のような映像であるかも知れない。
実際に流れる景色とは別の映像を、わたしは頭の中のスクリーン上に同時に見ているのであった。
わたしは船の速度を落とした。
景色がゆっくりと流れるのに合わせて、それは輪郭(りんかく)を失った。
滲(にじ)んだ世界では、陽の光も、エンジン音や波を切る音も遠くにあった。
感覚が別の次元へとシフトする。
わたしは、船の運転を肉体に任せて、もう一つの映像に向かった。
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