次第に大きくなる太鼓のような音を、わたしは目を閉じたままで聞いていた。
「ドン…ドン…ドン…ドン…」
それは確実に大きくなっていく。
そのうちに、川面に何かの気配を感じるようになった。
それは、まるで人混みのような感覚である。
複数の気配のようなものを感じたので、わたしは目を開けてそれを確認したくなったが、それはしない方が良いような気がした。
それは、目を開けてしまうとその気配が消えてしまいそうな気がしたからである。
理由はないが、何となくそう思うだけである。
わたしは目を閉じたままで気配の様子を伺うことにした。
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