キリギリスを見た時、わたしはそれをどうにかして外へ逃がそうとしたが、暴れるのと恐怖心から捕まえるのことができずにいた。
キリギリスを外に放り出したいという気持ちと恐怖心が入り混じり、わたしは冷静さを失っていた。
どう考えたのかは覚えていない。
もしかしたら、何も考えてはいなかったかもしれない。
わたしはシャワーを掴み、浴槽の中で暴れているキリギリスに対して熱湯を浴びせた。
キリギリスは飛び跳ねることもできずに足を目一杯に伸ばすと、そのまま動かなくなってしまった。
それは一瞬の出来事であった。
キリギリスは命を失ったのである。
わたしは小さな命を一瞬の内に奪った。
わたしがしたこと、それは指先で蛇口を捻っただけである。
0 件のコメント:
コメントを投稿