それは暗闇の中からそれはゆっくりと姿を現した。
艶めく鱗(うろこ)が暗闇の中に更に黒く不気味な光を放っていた。
黄色い目玉がギロリと動き、わたしを捕らえた時、全身が金縛りにでも合ったかのように身動きが取れなくなってしまった。
それは明らかに蛇の姿をしていた。
とは言え、頭だけでもわたしには抱え切れないほどに大きな蛇であった。
蛇に睨まれた蛙のように身動きが取れなくなったわたしに、黒い蛇はゆっくりと近付いてくるのであった。
プレッシャーと共に恐怖心が襲ってくる。
そう言えば昔、子どもの頃に父親とお化け屋敷に入ったことがあった。
あの頃、年長児だったわたしはお化け屋敷の暗さが怖くて、目を瞑(つぶ)り、必死に父親の腕にしがみ付いていた。
結局、わたしは怖くて一度も目を開けることができなかった。
父親の太い腕がとても心強かったことを今も覚えている。
あの時と同じような恐怖心が込み上げてくるが、あの頼もしい父親の腕はここにはない。
その代わりに、守るべき狐たちがここにはいた。
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