瞼(まぶた)を閉じて心を静めると、彼の全身を黒い煙のようなものが覆っているのが見えた。
黒い煙は顔を覆い隠すように、頭上に集中して停滞していた。
この黒い煙からは破滅的な力を感じる。
彼の”不幸”の正体は、この黒い煙なのだろうか?
この黒い煙を理解して解消するのであれば、彼の抱えている”不幸”も解消されるだろうか?
様々な思考がわたしを通り抜けた。
その時、わたしは時が満ちたのを知って瞼を開き、彼を目の前に導いた。
背中を向けて腰を下ろすように頼むと、目の前には”不幸”をまとった鉛が鎮座(ちんざ)した。
わたしは彼の”不幸”に触れる必要を感じた。
すると、右手が彼の背中に伸びて、人差し指と中指を使って文字を記し始めた。
これは、天使の言葉?であるだろう。
わたしには解読することができないが、彼に必要な言葉であるに違いない。
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