しばらく待っても、彼女達から明確な答えが得られなかった。
二人共黙り込んでしまったからである。
それは、彼女達が信仰し、わたしにお勧(すす)めする宗教が、この程度の例題で破綻する教えであるということなのだ。
残念ながら、彼女達の”神”は彼女達を救うことなどできない。
わたし程度の者を前にして、彼女達は既に苦悩しているからである。
わたしが苦しめているのではない。
彼女達が勝手に苦しんでいるのである。
それは、彼女達の大切に思う人が車で人を轢(ひ)き殺すことは、今すぐにでも実現するかも知れない可能性であり、現実的な話であるからだ。
その現実的な話から背を向けて、空想の中で生きようとしてきたのである。
推測ではあるが、彼女達の現実には顔を背けたい辛い経験があるのだろう。
彼女達が”神”を見て、”神”と共に生きることは空想に過ぎないだろう。
残念ながら、彼女達は”神”に会うことは出来ない。
彼女達が会えるとすれば、背後にうごめく黒い影達である。
現実に立ち向かう勇気の無い者には、空想の中で生きる以外に道はないのである。
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