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自身の体験をつづりたいと思います。
拙い文章ではありますが、お暇ならお付き合いください。

2012年11月8日木曜日

追憶 261

圧倒的な威圧感に対して、わたしは背を向けたい気持ちでいっぱいだったが、それは許されなかった。
蛇に睨まれた蛙の心境である。
圧倒的なものと対峙した時、人は動くことができないのだろう。
わたしは青年に魅入られていた。
その時、青年がおもむろに右腕を差し出した。
それはわたしに向けられているようであった。
美しい指先を眺めていると、青年が口を開いた。

「わたしは大天使『ミハエル』。お前の盾となり、剣となる者。お前を守護する者。お前に力を与えよう…この手を取りなさい…」

自らを天使と名乗る青年はそう言ってわたしに差し出した手を更に伸ばした。
わたしは彼の雰囲気に圧倒されていた。
魂が痺れるという表現が正しいのかどうかは分からないが、心の深い場所が震えているようである。
わたしに選択の余地はなかった。
その美しい手を取らなければならないと強く思ったのである。
わたしは力を振り絞って、彼の右手を掴んだ。

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