「お別れだ…」
わたしは小さく呟くと、掲げた右手を振り下ろした。
硬い岩に金属を突き立てるような感覚と共に、黄金の杭は劣等感の中へと飲み込まれていった。
真っ黒な劣等感の中に入り込んだ黄金の杭は激しく輝きを放つ。
ひび割れるようにして、劣等感の内部からは金色の光が溢れ出していた。
あまりの眩しさに耐え兼ねて瞼(まぶた)を落とす。
すると、わたしの視界には光が届かなくなった。
わたしの目の前には真っ黒な瞼の裏側が映っている。
しかしながら、瞼を開いても、わたしの目の前にはもう劣等感は存在していないだろう。
直感的に先ほどとは違う場所にいると分かる。
わたしはもう心の中にはいないのである。
この真っ黒な瞼の裏側が、現実(肉体)のものだと理解することができた。
わたしはゆっくりと瞼を持ち上げようとした…
が、微動だにしなかった。
わたしは一瞬たじろいだが、すぐさまその状態を受け入れるのであった。
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