光の十字架は、風呂場の磨りガラスを通り抜けて黒い獣に突き刺さった。
甲高い悲鳴が闇夜に響いた。
しかしながら、それは親友の耳には届かないものである。
わたしは吐き気に襲われて、ゲップによって黒い煙を吐き出した。
そして、目の前に円を描くと、光る扉が現れる。
それは、わたしと黒い獣を繋ぐ扉であった。
光の扉に腕を差し込んで、沈黙した黒い獣を掴む。
そして、こちらに引き抜くと同時に光の扉は消えた。
黒い獣には覇気がなく、眠っているように沈黙している。
わたしは再び宙に十字を描いて、光の十字架を膝(ひざ)の上の黒い獣に突き刺した。
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