親友の父親を探しに行く日、二人の都合により出発が遅れた。
	陽は完全に没し、雲の立ち込める夜空には遠慮がちに星が瞬(またた)いている。
	車で山奥の父親の実家を目指している時に月を探したが、わたし達には見付けられなかった。
	真っ暗な山道にはヘッドライトの明かりの中だけに世界が存在している。
	それは、親友の父親の見ている世界なのかも知れないと思った。
	月明かりでもあれば、別の選択肢も思い付いたかも知れない。
	もちろん、わたしは人の選択はそれがどのようなものであっても最善だと思っている。
	例え、それが自ら命を絶つ行為であろうとも、それ以外にはできないのだ。
	できないことを嘆(なげ)いても仕方はない。
	とはいえ、違う結果を求めるのは、人の傲慢(ごうまん)であるだろう。
	
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