二つの影は、ふすまに映し出されていた。
それらは、背後から蝋燭(ろうそく)の火に炙(あぶ)られるようにして、その輪郭を微かに揺らしていた。
彼女はその不思議な光景から目が離せなかった。
影を観察していると、それが動物の形をしていることに気が付いた。
二匹の動物が向かい合っている。
彼女はそれが狐と狸(たぬき)だと直感的に思った。
狐と狸が向かい合って座っているのを更に観察をしていると、互いが交互にお辞儀を始めた。
一方が頭を下げて上げると、もう一方が同じように頭を下げて上げる。
これを繰り返す。
そのうち、何かの飲み物を持ち出して互いにお酌を始めた。
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