車内に広がるオレンジ色の光が小さな安心感を与えてくれているうちに、わたしはポケットをまさぐって携帯電話を取り出した。
助手席に放ってあるナイロンのジャケットを手に取ると、ルームランプを切って車外へと飛び出した。
外は本当に暗くて、何と無く物の形が掴めるほどの明かりしかなかった。
見上げるほどの古い樹木が空を覆う。
それでも、空は微かに明るく、樹々の枝葉をわたしに教えていた。
携帯電話の液晶画面の明かりがわたしの命綱である。
当時の携帯電話は照明機能が付いてはいなかった。
そのため、頼りない画面の明かりで進むしかなかったのである。
懐中電灯を持ってくれば良かったが、忘れてしまっていた。
しかしながら、頼りない携帯電話の明かりも無いよりはましである。
それに、この方が大自然の夜を味わうことができる気がして風情があった。
0 件のコメント:
コメントを投稿