このブログについて

自身の体験をつづりたいと思います。
拙い文章ではありますが、お暇ならお付き合いください。

2012年9月9日日曜日

追憶 201

海に出て毎回ゴミを拾う。
船で走っている時、筏(いかだ)で作業をしている時など、結構な数のゴミが海面を浮遊している。
スーパーのナイロン袋やペットボトルなどが多い。
わたしは毎回少し悲しくなり、少し怒りながらそれを回収するのであった。

そんなある日、北灘湾に正午を知らせるサイレンが鳴り響き、わたしは筏での作業を早めに切り上げて昼食を摂るために家路に着いた。
初夏の陽射しが海面に反射してキラキラと美しかったのを覚えている。
船のエンジン音に紛れて、海を切り裂く音が聞こえる。
それは普段と変わらない当たり前の光景であった。
遠くに見える山の向こうには、入道雲の子どもが生まれていた。
わたしは入道雲の子どもを肴に、潮風を引っ掛けて夏に酔った。
その時だった。
わたしの頭の中には自分以外の意識が流れ込んでくるような感覚があった。
それは突然のことであったし、一瞬のことであったので、わたしは驚いて船を止めた。
アイドリングのためにエンジン音が小さくなる。
わたしは声を聞いたのだろうか?
周りを見渡す。
養殖筏の間にカモメが数羽飛んでいる。

「カモメの鳴き声でも聞いたかな?」

わたしは不思議に思ったが、勝手にそう解釈して再び船を走らせた。

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