わたしは高く舞う白い龍の美しさから視線を離すことはできなかった。
その時、わたしは自らの肉体を強く感じた。
感覚が意識的な部分から、肉体的な部分へと移り変わろうとしているようである。
少しずつではあるが、細胞が活動するような感覚、皮膚が空気と触れ合うような感覚、そして何よりも血液が全身を潤すような感覚が蘇ってくる。
普段は当たり前過ぎて何にも感じない感覚ではあるが、このような状況においてはそれが当たり前ではなかった。
肉体的な感覚をとても愛おしく感じるのである。
感覚が意識的な部分から肉体的な部分へと移り変わると、まぶたを閉じて座る自分を認識することができた。
しかしながら、その肉体は自由を得ている訳ではなかった。
感覚としては普段と変わらないが、まぶたを開くこともできなければ、体制を決めることもできなかった。
不思議である。
まぶたを閉じて座るわたしは、頭上の龍を見上げていた。
あまりに高いところを飛ぶので首が痛い。
その時、わたしは自らの口が大きく開くのを感じた。
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