それは隙間風程度の音を引き連れていたが、次第に大きくなり海鳴りのような音へと変わっていった。
世界が慌ただしい。
胸の奥でも何かが騒いでいる。
しかしながら、わたしの中に不安はなかった。
むしろ、落ち着いている。
わたしの意思ではないわたしが騒いでいるような不思議な感覚である。
頭は冷静沈着なのに、心は緊張しているような状態であった。
黒い空に一際目立つ白色が現れた。
それは徐々に黒色を浸食していく。
白色が大きくなるに連れて、それが龍の形をしていることが分かった。
そして、近付くに連れて、それが山よりも大きな龍であることが分かった。
わたしはいつか海で見た巨大な白い龍を思い出し、目の前のそれを当てはめるのであった。
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