目の前の龍はその姿を徐々に鮮明にしていった。
全身を覆う大きな鱗(うろこ)は青白く妖艶な輝きを放っている。
その時、どこからともなく声が聞こえてきた。
「力が…必要か?」
それは太い男性の声だった。
声というよりは意思であるだろう。
心に直接的にとても鮮やかに突き刺さる。
わたしは太い男性の声に対して反射的に応えた。
「はい!力が欲しい!」
それは純粋な気持ちが導き出した答えであったに違いない。
そこには何の打算もなかった。
わたしの中には意識(霊)的な力というものが、人や霊に対して何らかの役に立つという認識しかなかった。
その力が私利を貪る道具になることなど、考えの中にはなかったのである。
何よりも、この龍が美しかったことがわたしの中の様々な選択肢を潰したのであろう。
だからわたしは純粋な気持ちで即答したのである。
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