このブログについて

自身の体験をつづりたいと思います。
拙い文章ではありますが、お暇ならお付き合いください。

2012年6月16日土曜日

追憶 116

肉体は低い声を響かせ、ベッドの上でもがいていた。
わたしはどうすることもできずにただそれを見守っているだけに過ぎなかった。
しかしながら、どういう訳か少しずつではあるものの、黒い犬の意識がフェードアウトしていくのに気が付いた。
なぜだか黒い犬の感情が徐々に薄れていってしまうのである。
これは一体どういうことなのだろうか?
わたしには初めてのことばかりで展開を予測することもままならなかった。
風船が萎(しぼ)んでいくようにわたしの前から黒い犬は徐々に撤退を始めていた。
遠ざかる意識を前にして多くの疑問が尾を引いたが、わたしにはどうすることもできない状況である。
手を伸ばすことも、それを引き止めることもできないのである。
わたしにできることはと言えば、それが最善であると信じ、すべての状況を受け入れることだけであった。
少しずつ遠く薄れていく黒い犬の意識を見送りながら、わたしは少し寂しい気持ちを抱えているのであった。

0 件のコメント:

コメントを投稿