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自身の体験をつづりたいと思います。
拙い文章ではありますが、お暇ならお付き合いください。

2012年6月6日水曜日

追憶 106

そう思った瞬間に、わたしは黒い犬を抱きしめていた。
自分でもなぜそのようにしたのかは分からなかったが、抱きしめざるを得なかったのである。
それは、母親が我が子を自然と引き寄せるような感覚であるだろう。
それは「愛」であったと断言することができる。
黒い犬はわたしの腕の中でも威嚇(いかく)を続けていた。
しかしながら、それを拒絶するようなことはしなかった。
察するよりも多くの苦しみを抱えているに違いなかった。
幼いわたしが暴力的であったのも、その幼い心が愛情によって満たされてはいなかったからであろう。
黒い犬を抱きしめていると、そのことがひしひしと伝わってくる。
わたしは何てことをしてしまったのであろう。
これでは黒い犬と自身の心があまりにも可哀想ではないか。
苦しみを訴える知恵も言葉も持たなかった幼少なわたしと、意識的な存在である黒い犬をずっと苦しませていたにもかかわらず、今までそれに気が付いてやれなかった自分を恥じた。
わたしは何度も「ごめん・・・ごめんね・・・」と彼らに許しを求めた。
彼らが許してくれるのかは目的ではなかった。
謝ることが今の自分にできる最大の責任であると感じていたのである。

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