ぼんやりと滲(にじ)む頭の片隅で、どこからともなく聞こえてくる何かの声は絶えること無く鼓膜に触れ続けていた。
洞窟に反響する声のように歪んで聞こえてくるそれは、わたしを幻想的な世界へと誘っているようだった。
わたしは働かない脳みそでその声を必死になって追いかけたが、捕まえることはとても無理だった。
気分が悪くなったのを感じた時、わたしは自分が直立不動のままその場に倒れ込むのに気が付いたが、それを止める手だてはなかった。
暗い地面に叩き付けられた。
しかしながら、次の瞬間には声がはっきりと聞こえていることに気が付き驚いた。
視界には何の光も映らない。
そこにあるのは真っ暗闇だけであった。
頭が痛い。
わたしの中にはいくつもの疑問が飛び交っていたが、次から次へと繰り広げられる急な展開に追い付くことに必死になっているために、疑問を消化する暇がなかった。
しかしながら、分かったことが一つだけあった。
それは、わたしが辿り着いたのは普段わたしが「生活」をしている世界であるということだった。
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