右手に意識が集中し始めると、わたしは拳を握り締めた。
彼らはわたしに覆い被さるようにしている。
見える訳ではないが、そう感じるのである。
わたしは握り締めた拳を放ち、この状況から何とか抜け出そうと考えていた。
しかしながら、わたしが自らの拳を使うことはなかった。
なぜなら、わたしが殴ろうとするより先に彼らは姿を消したからである。
わたしは金縛りから解放された。
本来ならば喜ぶべきことなのかも知れないが、今のわたしには嬉しいことではなかった。
金縛りから解放されたことは素直に嬉しかったが、わたしの心の中には疑問が生まれていた。
それは、彼らに対する対応がこれで良かったのか?ということである。
それは、彼らが深い苦しみと大きな悲しみを抱えていたことを理解することが出来たからである。
いくら霊体だとは言え、助けを求めて訪ねて来た者を邪険に扱い、更には突き放しても良いのか?
ということがわたしの中で引っかかっていたのである。
世間一般の価値観では、霊=怖いもの、もしくは悪いもの、という風潮があるだろう。
しかしながら、それは悪霊や怨霊などという言葉やイメージ、誰かの感想などによる先入観に他ならないのではないだろうか?
実際に自らが体験して感じたことは、一般的な価値観とはずれているような気がした。
わたしには、霊=怖いもの、悪いもの、という価値観以外に感じるものがあったのである。
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