わたしの感謝の言葉に、老女は穏やかに返した。
	
	燃料の満ちたバイクは、以前よりも力強く感じた。
	快調な排気音は、気力に満ちていた。
	それはわたしの心配事が消え去ったからであろうか?
	バイクも心も軽かった。
	帰り道で、わたしは山で出会った子どもを思い返していた。
	彼は人間ではないだろう。
	恐らく、山の神様か精霊なのではないだろうか?
	彼がわたしを通さなかったのは、バイクの燃料が不足していることを知っていたからではないだろうか?
	わたしが自分の思う通りに奥へ進んでいたなら、すぐに燃料が尽きていただろう。
	そうすれば、民家もあるかどうかも分からない山道で困り果てていたはずである。
	あの時に引き返したことで、わたしは麓のガソリンスタンドまで無事に辿り着くことができたに違いない。
	
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