澄み渡る青空は、宇宙空間に存在する星々の概念を忘れさせた。
春の日差しは世界を鮮明に映し出す。
少し肌寒く感じる風と淡々と耳に届くバイクの排気音、そして、コーナーを走る時の遠心力が心地好かった。
わたしは自然と人工を堪能していた。
目的の桜が霞(かす)む程に、ただバイクで走ることが楽しかったのである。
ダムに到着すると、わたしはバイクを停めて一休みすることにした。
遠くから鳥の囀(さえず)りが聞こえてくる。
時折、風が枝葉を揺らす音がするが、他に音は無かった。
わたしにとってはこれだけでも価値がある。
人間活動が生み出す騒音に囲まれた日常は、わたしにとっては苦悩でしかない。
森の中には耳が痛くなる程の静寂が存在している。
森の中で独りでいる時には、自分の足音が五月蝿(うるさ)く感じてしまう。
自分の鼻を通過する空気の音が気に障ったことがあるだろうか?
森の中では心臓の鼓動でさえ聞こえてくるようである。
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