するとまた走りたくなった。
	バイクに跨(またが)り、わたしは桜に誘われるように道を奥へと進んだ。
	桜並木を抜けると、一層細い道に入った。
	それは、軽自動車同士でもすれ違うことが難しいのではないかと思えるような道である。
	樹々は鬱蒼(うっそう)と茂り、空を覆い隠している。
	肌寒さが太陽の存在を忘れさせようとしていたが、木漏れ日が辛うじてそれを引き止めていた。
	桜の賑(にぎ)わいに比べると、ここはとても淋しい場所であった。
	わたしの心の中では、自我意識が不安を生み出し始めている。
	バイクを操作しながら、自我意識を宥(なだ)める。
	その一方では、真(本当の自分)が好奇心を生み出していた。
	わたしは真に従いたいのである。
	この先には集落が存在しているはずだ。
	わたしはそれを見たいのだ。
	
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