畑が増え、田んぼが目に入る頃には、人の生活に触れていた。
	
	
	
	そこにはどこか懐かしい風景が広がっていた。
	わたしの幼い頃の空気がそこにはあったのだ。
	木製の電柱は、背の低いものが道端に一本だけ残っており、今でもクレオソートの黒さを残している佇(たたず)まいは、わたしを幼心へと回帰させるようであった。
	わたしは再びバイクを停め、恐らくは20数年振りの再会に自分勝手に酔い痴れていた。
	感慨(かんがい)に浸り終えると、わたしは再びバイクで走り始めた。
	すると、道に覆い被さるように民家の屋根が現れた。
	狭い土地柄なのか、道路と民家の距離が近いのである。
	一段高い場所に建てられた民家であるが、道から窓を開けられそうな程の距離であった。
	わたしにとっては、そんなことが新鮮であり、楽しかった。
	
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