「家に目の見えない母親がいるんでね…」
彼は母親と二人暮らしであるようだ。
そして、その母親は目が不自由なようである。
それを聞いて、わたしは躊躇(ちゅうちょ)したが、やはり彼をこのまま返す訳にはいかないと思った。
医者はしっかりと検査したのであろうか?
医者の権限によって引き止めることはできないのか?
どのように強靭な人であろうとも、あの軽自動車で事故の衝撃を受けながら無事な訳がないのだ。
素人のわたしであっても、そんなことは明白である。
わたしは一日だけでも入院してくれるように頼んだが、彼は母親のことが心配だと言って帰るの一点張りであった。
話が平行線を辿るので、わたしが折れるしかなかった。
そこで、母が彼を自宅に送り届けることになって、わたしたちは別れた。
それは、Nを検査してもらうためであった。
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