わたしは女の生み出した恨みの感情に感謝した。
すると、右手が宙に十字を描く。
わたしはこれから、光の十字架を投じるのだ。
女と老人と、そして、男性をこの苦しみから解放する。
それが、わたしの仕事である。
迷いなく飛んだ光の十字架は、黒い顔の額から内部に埋まった。
すると、内部から徐々に光が広がって、やがて全体を包んだ。
それは柔らかな光であり、そこからは優しさが感じられた。
大きな悲鳴と共に、黒い顔はその形を崩していく。
輪郭(りんかく)の曖昧(あいまい)さに比例して、恨みの感情も薄れていくような気がした。