わたしは本気で可哀想だと思っていた。
「死んだ猫に同情してはいけない」と周囲の大人に教えられたが、わたしにはその意味が理解できない。
大人はわたしに逆恨みを買うなどと脅したが、助けてやるのが人情であり、人道なのではないかと思うのである。
それが人であっても同じであるだろう。
幼いわたしを守ろうとしての教えであったのかも知れないが、今となっては間違っていると思えるのだ。
苦しんでいる者を前にして自分の安否を優先することは、卑怯者のすることである。
今のわたしの心には、そのような考えは生じない。
わたしは助けるためにここにいるのである。
同情を続けていると、男の心にも変化が現れた。
「苦しい…辛い…悲し…い…」
男の訴えは恨みから、救済へと変化していたのである。
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