安らかな表情で眠る少女を眺めていると、天から声が響いた。
	「解放し、行かせなさい」
	わたしはその言葉に従い、抱える腕の力を抜いた。
	すると、少女は風に誘われる鳥の産毛のように柔らかく浮かんで、わたしの腕から離れた。
	その時に天から差した一筋の光によって、全身が輝きに包まれるのであった。
	輝きが増すほどに、少女は天へと近付いていく。
	やがて、天の光と少女が一つに溶け合って見えなくなった。
	少女の姿が見えなくなると、速やかに天が閉じ、もはや光が照らすことはなかった。
	わたしは少女のいた空間と共に取り残されたのである。
	
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