扉の奥には赤黒い空間があった。
それは、トイレの個室くらいの広さであり、そこにはあの少女が後ろ向きで立っているのが見えた。
その背中からは不満と拒絶が漂っている。
しかし、わたしは少女がわたしをここまで招き入れたのだと確信していた。
そうでなければ、ここまで辿り着くことはできなかったであろうし、扉がこんなに簡単に開くはずもないのである。
前提として、彼女はわたしを拒絶しているのだ。
このように、上手く事が運ぶのは、協力者がいなければ不可能である。
その協力者が彼女自身であると、わたしには思えてならないのだ。
言葉が出ない。
わたしは言葉すら探してはいなかった。
どうするべきなのか分からなかったのである。
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