わたしは、這(は)うようにして歩く老女に案内されて廊下を進んだ。
家は新築の部類に入るだろう。
フローリングに白い壁紙、上階へと続く階段の踊り場には、大きなガラスが嵌(はめ)め込まれてあり、そこにはステンドグラス風のシートが貼られてあるが、それが柔らかな光を階段から廊下へと運んでいた。
わたしは老女と家のコントラストに違和感を覚えたが、慣れが違和感を拭(ぬぐ)うと信じて気にしないように努めた。
すると、階段の手摺の壁から、人影が顔を覗(のぞ)かせた。
それは、全身が灰色の男であった。
大きなガラスを背負っているため、逆光によってそう見えるのかとも思ったが、老女は一人暮らしである。
侵入者かと思ってはみても、男からは生気を感じることが出来なかった。
男は霊体である。
男からは何の敵意も感じられなかった。
そこで、わたしは男に挨拶をして、先を行く老女を追った。
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