山道の子どもがわたしを助けてくれたあの日から、わたしの心からは子どものことが離れなかった。
	会いたいという気持ちが日に日に増していくのである。
	わたしはあの子どもの正体が知りたいのだ。
	毎日のようにあの山道に向かおうとしたが、忙しさが許してはくれなかった。
	それでもある日、わたしは時間を得られたのである。
	そこであの日と同じようにバイクで山道へ向かった。
	桜は散り始めていた。
	風が触れると、一斉に花弁(かべん)が舞い落ちる。
	春の陽気の中に雪のように舞い落ちる花弁が、わたしを幻想へと誘(いざな)うようであった。
	
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