わたしは自分がどこへ向かうかを知らずに、バイクを走らせた。
	
	心の赴(おもむ)くままに走っていると、わたしはダムに到着していた。
	ダムを少し過ぎた辺りの道路から一段降りたところに休憩所の名残がある。
	わたしは何気無くそこへ向かい、腐敗した木の階段を慎重に進み、苔生(こけむ)したベンチに腰を下ろした。
	強い風が湖を走る。
	周りの木々が大きな音を鳴らして揺れた。
	それは、わたしの心を現しているようであった。
	山が騒ぐように、わたしの心も騒いでいるのである。
	しかしながら、わたしは逸(はや)る気持ちを抑えてベンチに腰を下ろさなければならなかった。
	それは、心に従っているからである。
	
0 件のコメント:
コメントを投稿