A子は自分が何故涙を流しているのか分からないと言った。
わたしにもそれが分からないから、これからその理由を探すのだと告げた。
A子は深く頷(うなず)いて見せ、背中を向けて座した。
わたしはA子とB男に対して何の心配もないことを告げ、何が起ころうとも静かに座っているように頼んだ。
大きく息を吸い、静かに吐く。
少しずつ意識が整うような感覚に導かれるようにして、わたしはゆっくりと瞼を閉じた。
A子の背中に右の指先が触れる。
わたしはA子の背中に触れているが、その意識に触れているのである。
人差し指と中指が背中を走ると、そこには黄金色に輝く天使文字が現れた。
三列の天使文字を直線で囲う。
すると、それは強く輝き始め、光の塊となった。
わたしの両の掌(てのひら)がそれをA子の背中から意識へと押し込むのを見た。
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