黒い顔が完全に沈黙すると視界がにじんできて、すべてが暗闇に包まれそうであった。
わたしは自らの体力?精神力?に限界を感じていたこともあり、その状況を見守る以外の手段が思い浮かばなかった。
世界が崩壊しつつあったのだ。
徐々に閉ざされていく視界を眺めていると、わたしは自分の仕事が終わったのだと感じた。
暗闇に飲み込まれるようにして埋れていく黒い顔は、少し笑っているように見えた。
その記憶を最後にわたしはMさんの心の中から弾き出された。
懐かしい暗闇が眼前に広がっている。
懐かしい音が届き、懐かしい匂いによって鼻腔(びこう)が満たされる。
わたしは錆び付いた鉄の扉をこじ開けるようにして、重たい瞼(まぶた)を上げた。
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