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自身の体験をつづりたいと思います。
拙い文章ではありますが、お暇ならお付き合いください。

2017年5月19日金曜日

追憶 1685

常識的に考えてみれば、彼が人間ではないことは理解することができる。
汚らしい着物を羽織った老人が、一人で山の中の記念碑の上に座っているとは考えにくい。
わたしは初めから彼が人間だとは思っていない。
霊的な存在であり、山の神様か何かだろうと考えていたのである。
バイクを停めて、エンジンを切る。
すると、静寂が押し寄せてきた。
ヘルメットを置いて彼を見ても、同じように遠くの方を眺めている。
人間ならば、わたしに目線を落とし、多少の警戒心でも抱くところだろう。
しかしながら、彼はわたしに見向きもせず、興味すら無いようであった。
近付いて話し掛けてみても、何の反応もない。
彼はまるで、記念碑の一部のようであった。

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