それでも、景色を過去と照らし合わせながら楽しく進んだ。
	ミカン畑は山頂まで続いている。
	山頂に辿り着くと、拓かれたミカン畑からは裏山の鬱蒼(うっそう)とした手付かずの天然林が暗い影を落とし、どことなく不気味さを感じさせた。
	わたしは今朝の悪夢を思い出していた。
	ミカン畑と天然林の境界に立ち、瞼(まぶた)を閉じて静かに呼吸をする。
	そこでわたしは、鼓動が高まっていることを知った。
	これは登山による息切れではない。
	ワクワクしているのである。
	目の前の天然林に足を踏み入れれば、悪夢の答えがあるかも知れないと考えると、楽しくなってしまうのであった。
	わたしは焦る気持ちを静め、そっと暗い影を踏んだ。
	
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