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自身の体験をつづりたいと思います。
拙い文章ではありますが、お暇ならお付き合いください。

2016年8月26日金曜日

追憶 1446

それから、わたし達の仲は険悪なものとなっていった。
細かなすれ違いが増え、静かな喧嘩を導いた。
わたし達の絆はもう限界だろう。
あとは時間の問題である。
焼けた炭が中身の無い姿を保っているのと同じである。
指先で触れるだけで、脆(もろ)くも崩れ去ってしまうだろう。
後には燃えることのない白い灰(はい)の粉が虚しく残るだけである。
わたし達の炎は既に消え、もはや余熱を弄(もてあそ)ぶだけとなっていった。
わたしはNを抱いた。
それは、燃える炎に執着していたからかも知れない。
しかしながら、そこには渇いた灰が、まるで人形のように横たわるだけであった。
暗闇の中で、Nの頬を静かに涙が走った。

「ごめん…」

わたしは咄嗟(とっさ)にNから離れ、ソファーに身体を預けた。
それは鉛(なまり)のように沈み込み、そのまま海の藻屑(もくず)と消えたかった。
わたしは自分自身を汚ないものだと思った。

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